◆腰痛とは?

腰痛とは人類が二本足で歩き出した時点で宿命づけられた苦難であり、全世界で太古の昔から人類を苦しめています。
人類の身体は二足起立状態で生活するには、最大の構造的欠陥があります。それは上半身の重さに対してそれを支えるにはあまりにも細くて小さい背骨です。
あと1000万年ぐらいしたら、腰痛を知らない進化した人類になっているかもしれませんが、現状全人類が同一の構造をしているので仕方ありません。

この構造的欠陥を補うには体幹の筋力に頼るしかありません。しかし、筋肉隆々の人でも油断して気を抜いたり、極端に疲労していたりすると腰痛を引き起こすことがあります。ですからそもそも「腰だけを曲げてかがむ動作をしないようにしましょう」などと言われます。

当院を来院されるきっかけで最も多い疾患です。


腰痛の種類


まず、一般によく使われるのですが、正式な傷病名ではないものに、

・ぎっくり腰(急性腰痛症)
・坐骨神経痛


などがあります。
そして

・椎間板ヘルニア
・腰椎捻挫
・腰椎椎間板症
・腰部脊柱管狭窄症
・梨状筋症候群
・椎体圧迫骨折
・変形性腰椎症(変形性脊椎症)


などなど、整形外科を受診するとさまざまな傷病名が付きます。
以下の項目では、それぞれの腰痛の解説とそれに対するカイロプラクティック施術の考え方を簡単に説明します。


ぎっくり腰(急性腰痛症):

一般的に、腰をかがめた姿勢で重いものを持ったりして起こるとされますが、実際は軽いものでも、もしくは何も持ってなくてもかがんだ姿勢だけでも起こります。他にも咳やくしゃみ、ゴルフなどの体幹を捻る動作で発症する人もいます。
症状の程度は様々で、痛みを我慢して生活ができるレベルの人もいれば、寝た状態からほとんど身動きができないという人もいます。
非常に多い症例であるにも関わらず、この発症メカニズムは、医学的には未だ確定されていません。

整形外科的には「安静に寝ている」が基本になります。安静にしていることである程度、中には完全に痛みが無くなる場合もあります。しかし多くの場合、痛みが残ったり、そもそも仕事等で安静にしていられずに痛みを引きずり続けてしまいます。
このような痛みの多くは筋肉が起こしています。腰部の筋肉が過緊張を緩めることができず、痛みや違和感が慢性化していくのです。
当院では、この筋肉に「緊張せよ」という命令を出し続けている神経をカイロプラクティックのテクニックを使って「リセット」し、筋性の痛みから解放していきます。


坐骨神経痛:

これは傷病名ではなく、症状の呼び名です。
「坐骨神経」とは第4腰椎神経〜第3仙椎神経が束になった、鉛筆ほどの太さのある神経です。この神経が支配する知覚領域は非常に広く、太ももの前面以外、お尻も含めた残りの下肢全体です。この坐骨神経の支配領域のどこかに神経症状が出た状態を全て坐骨神経痛と呼びます。
このページで紹介している他の腰部傷病にも、この症状を伴うものが少なくありません。


椎間板ヘルニア:

人間には頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個計34個の椎骨が積み重なって脊椎(いわゆる背骨)を構成しています。これら椎骨間に椎間板と呼ばれる座布団のような軟骨が挟まっています。この中に髄核と呼ばれるゼリー状のものが入っており、椎間板に強い圧が加わるとこの髄核が外に飛び出てしまう(ヘルニア)ことがあります。椎骨内には脊髄が通っており、各椎骨間から末梢神経が左右に伸びています。この末梢神経が、飛び出た髄核によって圧迫されてしまう事で様々な神経症状を発症するとされています。
整形外科では腰部に症状があり、MRI画像で症状と同じ場所の椎間板から髄核がヘルニアを起こしている場合に「椎間板ヘルニア」と確定診断されます。逆に言うと、MRI画像で髄核がヘルニアを起こしていても、その部位に痛みがなければ「椎間板ヘルニア」とは診断されません
実際、腰痛がない人が、別の目的で撮った腰部MRI画像に髄核がヘルニアを起こしている場合はよくあります。複数の椎間板の髄核が同時にヘルニアを起こしているのに、腰痛や神経症状がまったく無いという人も珍しくありません

整形外科では、症状が強く、安静による症状の改善がみられない場合には手術を適応になることもあります。手術をした患者さんも多く見てきましたが、すっかり良くなる人、手術後すっかり良くなり1,2年後再び症状が現れる人、手術直後から症状が変わらない人など様々でした。大きな覚悟と決心の上、手術に踏み切った患者さんにとって、その手術後に再び症状が出てしまったときの絶望感たるや察するに余り有るものでした。
手術で当然「ヘルニアしている髄核」は取り除いており、MRI画像でもなくなっているにも関わらず、再び痛みに襲われるとはどういうことでしょうか?
この場合、ヘルニアと痛みは関係ないということであり、「そもそも手術が必要だったのか」という疑問すら沸いてしまいます。

カイロプラクティックの施術によって、出てしまった髄核を椎間板内に引っ込ませることは、まずできません。しかし、施術によって痛みや神経症状がなくなることは多くあります。この場合、ヘルニアを起こしている腰椎に直接カイロプラクティックの施術を行うことはありません。ヘルニアを起こしている腰椎以外の椎骨や骨盤を多角的に調整していき、ヘルニアがあっても痛くない腰の状態に導いていきます


腰椎捻挫:

捻挫とは靭帯の損傷の総称です。足首の捻挫が最も一般的ですが、靭帯とは骨と骨が関わる場所にはどこにでもあります。関節は靭帯でがんじがらめと言ってもよいと思います。各関節が「こっちには曲がるけどこれ以上は曲がらない。こっちには曲がらない。」というのはほとんどが靭帯の仕業です。足首の内反捻挫の場合、足首が内側に捻るのを抑えている前距腓骨靭帯という貧弱な一本の靭帯が全体重で伸ばされて起きます。この結果、前距腓骨靭帯が伸びてしまったり、部分断裂してしまい、痛み・腫れ・熱感が出ます。
腰椎捻挫も同様に腰部に熱感を認める場合があり、いわゆるぎっくり腰でこの状態になる場合も多いです。
腰椎同士を結びつける靭帯も多く存在しますが、足首のように可動領域を逸脱した範囲で瞬間的に動かされることは日常動作では考えにくく、これらの靭帯がどのようなメカニズムで捻挫の状態になってしまうのかは証明されてはいません。一説には椎間板の髄核や椎骨自体が一瞬飛び出して靭帯を損傷させているという説もありますが、定かではありません。

腰椎捻挫で、靭帯の炎症が起きているとき、カイロプラクティックの施術で痛みがきれいさっぱり消えることはありません。靭帯の炎症は安静と時間によって回復を待つしかありません。場合によっては氷で冷やすこともあります。炎症がある程度治まったら、それ以外の慢性的な問題もしくは慢性化しそうな問題をカイロプラクティックの施術によって除去していきます


腰椎椎間板症:

レントゲンやMRIによって椎間板が薄くなっていたり、変形が認められた場合、この傷病名がつくことがあります。
椎間板にヘルニアは認められないものの、老化などにより腰部椎間板が機能低下することによって、その周りの組織が様々な痛みを引き起こすとされています。
これも「椎間板ヘルニア」同様、同じようなMRIの状態でも痛みがある人と痛みがない人がいます。

カイロプラクティックの施術で椎間板のMRI画像に変化は起きませんが、不要な筋緊張を取り除く施術などで、痛みから解放していきます


梨状筋症候群:

「坐骨神経」という神経が骨盤から出るときに隣接する「梨状筋」という筋肉が何らかの原因で過緊張などを起こして「坐骨神経」を圧迫することにより、坐骨神経痛を引き起こす症状のことです。「症候群」とは「原因がはっきりわからない」という意味です。

坐骨神経痛が出ている人が皆「梨状筋症候群」といわけではありません。
「坐骨神経」が束になる前の腰神経状態で腰部に直接的問題があって坐骨神経痛を呈する場合もあれば、「梨状筋症候群」のように「坐骨神経」の束になってから、骨盤部に問題があって坐骨神経痛を呈する場合もあります。

「梨状筋症候群」と診断されている場合も、梨状筋を含めた各筋肉の過緊張を取り除き、身体全体のバランスを整えることにより骨盤を調整していきます


脊柱管狭窄症:

脊椎によって構成されている脊柱管(脊髄が通る管)が何らかの理由で圧迫されて、狭くなり、間欠性跛行と呼ばれる特徴的な症状が出ます。
間欠性跛行とは、

1.しばらく歩くと足にシビレや痛みが出る
2.立ち止まってしばらく休むとシビレや痛みが緩和する
3.しばらく歩くと再び同じシビレや痛みを発症する

1〜3を繰り返します(間欠性跛行の症状自体は脊柱管狭窄以外でも発症することがあるので鑑別診断が必要)。
原因としては、脊柱管に隣接する靭帯が骨化して厚みを増してしまったり、脊柱自体の骨変形などによって脊柱管を圧迫するなど、様々あります。しかし、原因が画像診断でははっきりしない場合も少なくありません。

この症状に対しても、まずは動きの悪い椎骨を施術して生活してもらい、症状の変化を確認します。それでも変化がない場合は、腰椎のある種の動きをつける施術を根気よく繰り返すことにより、少しずつ症状の開放へ導きます


変形性腰椎症、椎体圧迫骨折など骨に直接起こる異変:

椎体圧迫骨折とは急性のものは、高いところから落ちて強くしりもちをついたり、骨粗しょう症の人が「ぎっくり腰」の発生要因のような動作を行っただけでも発症するとされます。
急性のものは一瞬で椎体の前部又は全体が潰れ、身動きが取れないような激しい痛みに襲われます。この場合は腰部組織の急激な変化を伴うため激しい炎症も伴っており、しばらくは安静が必要になります。
カイロプラクティックの治療は急性期の痛みが引いた後、抜けきらない痛みの除去や壊れてしまったバランスの再構築になります
ただ、この椎体圧迫骨折があっても痛くない人も多くいます。長い年月をかけてゆっくり椎体が潰れていったと考えられていますが、真相は証明できていません。

その他「変形性腰椎症」などレントゲンで椎骨の変形が認められた場合につく傷病名もあります。こような場合でもカイロプラクティックでは椎骨(腰に限らず)の動きをつけることと、バランスを整えることで、多くの場合症状が緩和されていきます


危険な腰痛

非常に稀ではありますが、中には癌による骨転移や感染症など、通常の施術が適用でない危険な腰痛もあります。

・かがんだ、捻った、ぶつけたなど、腰に負担がかかる何らかの原因がまったくない
・安静にしていても日に日に痛みが増悪する
・夜間痛など、横になった安静時でも痛みが強い
・姿勢の変化による痛みの差がない


このような症状の場合は、まず整形外科を受診し、一通りの検査を行うことをお勧めします。



HOME


inserted by FC2 system